ゆきのひ |
雪の日 |
冒頭文
あまり暖いので、翌日は雨かと思って寝たが、朝になってみると、珍らしくも一面の銀世界である。鵞鳥(がちょう)の羽毛を千切(ちぎ)って落すかと思うようなのが静かに音をも立てず落ちている。 私はこういう日には心がいつになく落着く。そうして勤めのない者も仕合せだなと思うことがある。私たちは門を閉めて今日は打寛(うちくつろ)いで、置炬燵(おきごたつ)に差向かった。そうしてこういう話をした。
文字遣い
新字新仮名
初出
「趣味」1910(明治43)年3月
底本
- 日本文学全集 14 近松秋江集
- 集英社
- 1969(昭和44)年2月12日