てんぐ
天狗

冒頭文

一 城下の町なみは、古い樹木に囲まれていたため、よく、小間使いや女中、火の見仲間などが、夕方近い、うす暗がりのなかで、膝がしらを斬られた。何か小石のようなものに躓(つま)ずいたような気がすると、新月がたの、きれ傷が、よく白い脛(すね)に紅い血を走らせた。それは鎌いたちに違いないと人々は言っていたが、その鎌鼬(かまいたち)という名のことで、赤星重右(あかぼしじゅうう)のことが、どういう屋敷

文字遣い

新字新仮名

初出

「現代」1922(大正11)年12月号

底本

  • 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2008(平成20)年9月10日