どうわ |
童話 |
冒頭文
一 「お姉さま、——」 小さい弟は何時(いつ)の間にか川べりの石段の上に腰をかけ、目高(めだか)をすくっている姉に声をかけた。 「お前、いつの間に来たの、こちらへ来ると危ないわよ、わたしすぐ足をふいて行くから。」 姉は慌てて今まで流れにひたしていた足をふいて、拭いていながらも自分と同じい顔をしている弟を見て、そして四辺(あたり)に誰もいないのを見定めると、石の段々をあがった
文字遣い
新字新仮名
初出
「世紀 第1巻第3号」1924(大正13)年12月刊
底本
- 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
- ちくま文庫、筑摩書房
- 2008(平成20)年9月10日