みずうみ |
みずうみ |
冒頭文
これは何となく人間の老境にかんじられるものを童話でも小説でも散文でもない姿であらわそうとしたものである。—— 一 舟のへさきに白い小鳥が一羽、静かに翼を憩(やす)めて止っている。——その影は冴えた百合花のように水の上にあるが、小波もない湖の底まで明るい透きとおった影の尾を曳いている。ときどき扇のような片羽を開いて嘴(くちばし)で羽虫でも⥯0(あさ)るのであろう、ふいに水の上の白
文字遣い
新字新仮名
初出
「詩と音楽」1923(大正12)年5月号
底本
- 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
- ちくま文庫、筑摩書房
- 2008(平成20)年9月10日