くろだじょすい
黒田如水

冒頭文

蜂の巣 一 太鼓櫓(たいこやぐら)の棟木(むなぎ)の陰へ、すいすいと吸いこまれるように、蜂(はち)がかくれてゆく、またぶーんと飛び出してゆくのもある。 ここの太鼓もずいぶん久しい年代を経(へ)ているらしい。鋲(びょう)の一粒一粒が赤く錆(さ)びているのでもわかる。四方の太柱(ふとばしら)でさえ風化(ふうか)して、老人の筋骨のように、あらあらと木目のすじが露出(ろしゅつ

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日」朝日新聞社、1943(昭和18)年1月~8月

底本

  • 黒田如水
  • 吉川英治歴史時代文庫、講談社
  • 1989(平成元)年11月11日