サラダのなぞ |
サラダの謎 |
冒頭文
私はごく普通のフランス風のサラダが好きである。レタスとトマトを、酢とオリーブ油でドレスしただけの簡単なサラダのことである。洋食は、一般にいってあまり好かないが、このサラダだけは例外で、食卓に出ていると、つい先に手が出る。 ものの好き嫌いなどというものは、たいてい子供の頃か、せいぜい二十代までの生活環境できまるものらしい。私がこのサラダを好きになったのは、若い頃、もう三十年も昔のことである
文字遣い
新字新仮名
初出
「あまカラ」1960(昭和35)年1月5日
底本
- 中谷宇吉郎随筆集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1988(昭和63)年9月16日