わたしのうまれたいえ |
私の生まれた家 |
冒頭文
私の郷里は、片山津(かたやまづ)という、加賀(かが)の温泉地である。今は加賀市になって、国際観光ホテルもあり、近くに立派なゴルフ場もある。まるで昔日の面影はない。しかし私が生まれた頃は、北陸の片田舎の小さい部落であった。村ともいえないところで、本当の地名は、作見(さくみ)村字(あざ)片山津小字砂走(すなわせ)である。村の下の字、そのまた下の小字であるから、部落の大きさの見当はつくであろう。五十年の
文字遣い
新字新仮名
初出
「朗」1961(昭和36)年4月1日
底本
- 中谷宇吉郎随筆集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1988(昭和63)年9月16日