せんこうのひ
線香の火

冒頭文

昔、寺田(寅彦)先生が、よく「線香の火を消さないように」という言葉を使われた。 大学を新しく卒業して、地方の中学校即ち今の高等学校などへ赴任する学生が、先生のところへ暇乞(いとまご)いに行くと、先生はどういうところへ行っても、研究だけは続けなさいと諭(さと)された。「地方の学校へ行くと、研究の設備などは、もちろん少いだろう。研究費だってほとんどないだろうが、その気さえあれば、研究は出来る

文字遣い

新字新仮名

初出

「西日本新聞」1955(昭和30)年10月22日

底本

  • 中谷宇吉郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1988(昭和63)年9月16日