げんしばくだんざつわ |
原子爆弾雑話 |
冒頭文
昭和十二年の七月、北支(ほくし)の蘆溝橋(ろこうきょう)に起った一事件は、その後政府の不拡大方針にもかかわらず、目に見えない大きい歴史の力にひきずられて、漸次(ぜんじ)中支に波及して行った。そして、十月に上海(シャンハイ)が陥ち、日本軍が首都南京(ナンキン)に迫るに到(いた)って、漸(ようや)く世界動乱の萌(きざ)しが見えて来た。 丁度その頃、私は「弓と鉄砲」という短文を書いたことがある
文字遣い
新字新仮名
初出
「文藝春秋」1945(昭和20)年10月1日
底本
- 中谷宇吉郎随筆集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1988(昭和63)年9月16日