北海に愚魚あり その名をほっけという 肉は白きこと雪片を欺(あざむ)き 味はうすきこと太虚(たいきょ)に似たり 一片の三石(みついし)の昆布 一滴のうすくちの醤油(しょうゆ) 真白なる豆腐に わずかなる緑を加う くつくつと貝鍋は煮え 夜は更けて味いよいよ新たなり まだ子供たちが幼かった頃、うまくだまして、早く寝つかせた夜は、奥の六畳の長火鉢で、よく貝