『にほんせっきじだいていよう』のこと
『日本石器時代提要』のこと

冒頭文

弟治宇二郎(じうじろう)が書いた本というのは、表題の『日本石器時代提要』であって、菊判(きくばん)三百ページくらいの堂々たる体裁であった。評判も大分良かったらしく、『朝日新聞』の書評でも「年齢わずか三十歳の著者が」と、大いに褒めてあった。しかし本当は、当時二十七歳くらいだったので、ひどく早熟な方であった。 語学には、妙な才能をもっていて、来た時は仏蘭西(フランス)語はボン・ジュールくらい

文字遣い

新字新仮名

初出

「西日本新聞」 1955(昭和30)年7月19日

底本

  • 中谷宇吉郎随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1988(昭和63)年9月16日