こんきはずれ
婚期はずれ

冒頭文

友恵堂の最中が十個もはいっていた。それが五百袋も配られたので、葬礼の道供養にしては近ごろよくも張り込んだものだと、随分近所の評判になった。いよいよ配る段になると、聞き伝えて十町遠方(さき)からも貰いに来て、半時間経つと、一袋も残らず、葬礼人夫は目がまわった。一町の間に八つも路地裏のある貧乏たらしい町で、子供たちは母親にそそのかされてか、何遍も何遍も浅ましい手を出したが、そんな二度取り、三度取りをい

文字遣い

新字新仮名

初出

「会館芸術」1940(昭和15)年11月号

底本

  • 織田作之助全集 1
  • 講談社
  • 1970(昭和45)年2月24日