にほんだいじしん |
日本大地震 |
冒頭文
西暦一九二三年九月三日。うすら寒く、朝から細かい雨が降つた。日の暮に Spatenbräu(シユパーテンブロイ) 食堂の隅の方に行つてひとり寂しく夕餐(ゆふさん)をした。七月十九日にミユンヘンに著いて以来、教室では殆(ほとん)ど休なく為事(しごと)を励んだのであつたが、いまだに自ら住むべき部屋が極(き)まらない、極まりかけては南京虫に襲はれ襲はれしていまだに極まらずにゐる。それも教室の方の為事を休
文字遣い
新字旧仮名
初出
「改造」1929(昭和4)年10月
底本
- 斎藤茂吉選集 第九巻 随筆
- 岩波書店
- 1981(昭和56)2月27日