ぶっきょうしかにいちげんす |
仏教史家に一言す |
冒頭文
歴史家に要する資格のさまざまあるが中に、公平といふことがその重要なるものの一なるは争ふべからず。公平とは読んで字の如く一見甚だ明かなるが如くなれど、細かに考ふれば真に公平を保つは容易のことに非(あら)ず。公平とは私偏を挟まぬこと、即ち事実を観察するに予め成見を抱かず、議論をなすに故意の造作を為さざること等にして、これらは史家の心掛け次第にて、随分避くるを得べしとす。されど人々の偏見は故意ならぬ所に
文字遣い
新字旧仮名
初出
「密厳教報 一六六」1896(明治29)年8月
底本
- 津田左右吉歴史論集
- 岩波文庫、岩波書店
- 2006(平成18)年8月17日