ひょっとこ |
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冒頭文
吾妻橋(あずまばし)の欄干(らんかん)によって、人が大ぜい立っている。時々巡査が来て小言(こごと)を云うが、すぐまた元のように人山(ひとやま)が出来てしまう。皆、この橋の下を通る花見の船を見に、立っているのである。 船は川下から、一二艘(そう)ずつ、引き潮の川を上って来る。大抵は伝馬(てんま)に帆木綿(ほもめん)の天井を張って、そのまわりに紅白のだんだらの幕をさげている。そして、舳(みよ
文字遣い
新字新仮名
初出
「帝国文学」1915(大正4)年4月
底本
- 芥川龍之介全集1
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1986(昭和61)年9月24日