ねむのはなさくいえ ――みずからペンをとらなかったし――
ねむの花咲く家 ――自らペンを取らなかった詩――

冒頭文

俺は病室にいる 暗室のような部屋だ。 今俺はあの豚箱で受けた 白テロの傷がもとで 同志にまもられ 病室に送られたのだ 病室の血塗(ちまみ)れた俺は 最后の日を覚悟している しかし、そこへ 一人の同志の持って来た ネムの木の花は おお 何と俺を家へ帰らせたがるだろう ねむの葉は眠っている しかし、俺は夜中になろうとねむれない ねむの葉は眠っても 花は 苦痛になやむ俺

文字遣い

新字新仮名

初出

「プロレタリア文学」1932(昭和7)年8月号

底本

  • 日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)
  • 新日本出版社
  • 1987(昭和62)年6月30日