むねにてをあてて |
胸に手を当てて |
冒頭文
かつて私は 悪事をやった立場に立たされた時 こう憎々しげに吐きつけられたものだ、 「胸に手を当てて、よっく考えて見ろ!」 私は今、胸に手を当てて 静かに激しく想っている。 私は悪事をやった為だろうか。 いや、私は悪事をやったのではない 悪事は彼等がやったのだ。 彼等は悪事を犯していながら 私をつかまえて手足を縛しておいて 「お前は悪人だ、 お前等は悪事の張本人だ」
文字遣い
新字新仮名
初出
「詩精神」1935(昭和10)年6月号
底本
- 日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)
- 新日本出版社
- 1987(昭和62)年6月30日