たなかくんについて ――たなかひでみつちょ『オリムポスのかじつ』じょ |
田中君に就いて ――田中英光著『オリムポスの果実』序 |
冒頭文
田中君の作品に就いてよりも、まづ田中君の人間に就いてお知らせして置いたはうが、いまは、必要なやうに思ひますから、そのはうだけを、少し書きます。 この創作集の末尾に、田中君が跋文を書き添へてゐるやうですが、それに據れば、「俺の過去は醜惡で複雜、まともに語れるものではない。この醜くさは、顏が赧くなつて脇の下から冷汗ものだ、などといふ體裁の好いものではなかつた筈だ。」と慚愧に轉倒してゐるやうで
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「オリンポスの果實」高山書院、1940(昭和15)年12月15日
底本
- 太宰治全集11
- 筑摩書房
- 1999(平成11)年3月25日