あおいふろしきづつみ
青い風呂敷包

冒頭文

ゴリラ 江川初子がカフェー・ドラゴンからアパートへ帰ったのはかれこれ朝の五時頃であった。 彼女はハンド・バッグから室(へや)の合鍵を出し、扉(ドア)を開けると、冷めたい朝風がサッと顔を撫でた、オヤと思って見ると往来に面した窓が開放(あけはな)しになっている。 たしかに閉めて出た積りだったのに——、と思いながら、室内を見廻したが別に変ったこともない。 初子は窓を閉

文字遣い

新字新仮名

初出

「キング 一三巻四号」1937(昭和12)年4月

底本

  • 大倉燁子探偵小説選
  • 論創社
  • 2011(平成23)年4月30日