たましいのあえぎ |
魂の喘ぎ |
冒頭文
1 ××新聞社の編集局長A氏は旧侯爵藤原公正から招待状を貰った。彼は次長を顧みて、 「君、これを読んで見給え、特種階級も大分生活が苦しいと見えて、藤原侯が家宝売り立てをやるそうだ」と白い角封筒を渡した。 次長は中味を引き出すと低い声で、 「拝啓、菊花の候益々御多祥奉賀候、就ては来る十月十五日拙宅において、いささか祖先珍重いたせし物、当家としては家宝とも称すべき品
文字遣い
新字新仮名
初出
「宝石 二巻一〇号」1947(昭和22)年11月、12月合併号
底本
- 大倉燁子探偵小説選
- 論創社
- 2011(平成23)年4月30日