しんやのきゃく |
深夜の客 |
冒頭文
声 女流探偵桜井洋子のところへ、沼津の別荘に病気静養中の富豪有松武雄から、至急報の電話がかかり、御依頼したい件が出来た、至急にお出でを願いたい、と云ってきた。 有松は如才ない男だ。殊に婦人に対しては慇懃(いんぎん)で物優しく、まことに立派な紳士であるが、どういうものか洋子は彼を好まなかったので、ちょっと行き渋ったが、職業柄理由なく断わるのもよくないと思い、午後四時四十分発の急行
文字遣い
新字新仮名
初出
「モダン日本 九巻一三号」1938(昭和13)年12月号
底本
- 大倉燁子探偵小説選
- 論創社
- 2011(平成23)年4月30日