さぎむすめ
鷺娘

冒頭文

1 「まゆみちゃん、何のお話かと思って飛んで来たら、いやあよ、またあの縁談なの? 私はやっぱり一生独身で、芸術に精進する積りなんだから、お断りしますよ」 百合子はさっぱりと云った。 まゆみは彼女が一度いやだと云い出したらどんなにすすめてみたところで無駄だと知っていたので、黙っていると、百合子はまゆみの気持ちを損じたとでも思ったのか、駅前の闇市で買ってきたという南京豆入りの飴を

文字遣い

新字新仮名

初出

「宝石 一巻四号」1946(昭和21)年7月号

底本

  • 大倉燁子探偵小説選
  • 論創社
  • 2011(平成23)年4月30日