とりものしょうせつのむずかしさ |
捕物小説のむずかしさ |
冒頭文
捕物小説を書くことの六(む)つかしさに私は近頃悩み抜いて居る。「もう此(この)辺で打ち切ろう」と思った事は一再でなく、わけても終戦後は雑誌の原稿に追い廻され乍(なが)ら、毎月そんなことばかり考えているのである。 二十年前、「オール読物」が創刊された時、編集長の今は亡き菅忠雄君が、新聞社の応接室に私を訪ねて、「岡本綺堂さんのような捕物を書いて見ないか」と持ち込んで来たのが、この二十年の苦難
文字遣い
新字新仮名
初出
「探偵作家クラブ会報 三〇号」1949(昭和24)年11月
底本
- 野村胡堂探偵小説全集
- 作品社
- 2007(平成19)年4月15日