向島 一 ……渡しをあがったところで田代は二人づれの若い女に呼びとめられた。——小倉と三浦とはかまわずさきへ言問(こととい)のほうへあるいた。 「何だ、あれ?」 すぐにあとから追ッついた田代に小倉はいった。 「あれは、君……」いいかけて田代は「慶ちゃん、君は知ってるだろう?」 それがくせの頤(あご)をなでながらあるいている三浦のほうへ眼を向けた。