しらみとるひと |
虱とるひと |
冒頭文
むづがゆき額(ひたひ)を赤めをさな兒(ご)は それとなき夢の白き巣立(すだち)をねがふ時、 爪しろがねに指細きふたりの姉は たをやかに寢臺近く歩みよる。 青天(あをぞら)の光、咲き亂れたる花に注(そゝ)ぐ 明け放ちたる窓のそばに幼兒(をさなご)を抱(いだ)き行きて 露ふりかゝるその髮の毛のなかに 美(うつく)しく、恐ろしく又心迷(まど)はする指は動きぬ。 ふたりの息のこわごわに出入
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「女子文壇 五ノ六」1909(明治42)年5月1日
底本
- 上田敏全訳詩集
- 岩波文庫、岩波書店
- 1962(昭和37)年12月16日