絹には「時」の薫(くん)ずれど 「妄執(まうしふ)」の色褪せにたり、 鏡のそとに溢れたる 雲の御髮(みぐし)に如(しか)めやも。 心急(いら)れの旗じるし 道の衢(ちまた)にいきほへど、 われはた君がねくたれを 枕(まくら)きてあらむ、眼もきりて。 げに唇のいとせちに 憧(あこが)るとてもあやなしや、 君戀ひわたる貴人(あてびと)が、 丈長髮(たけながかみ)のふくだみに 玉