いしく
石工

冒頭文

石工の長曰く、見よ、この稜堡(りようほう)を、この支柱を。 末代までの固(かため)と人はいふらむ。 シルレル「ヸルヘルム・テル」 石工アブラハム・クップフェルは鏝(こて)を片手に足場の上で歌つてゐる。隨分高く登つたものだ。大鐘の銘の文句を讀んでると、飛迫控(とびやりびかへ)の三十もあるこの御堂(みだう)、御堂の三十もあるこの市(まち)と、同じ高さに足が來てゐる。 こ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「芸文 六ノ三」1915(大正4)年3月

底本

  • 上田敏全訳詩集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1962(昭和37)年12月16日