あすは、あすは、
あすは、明日は、

冒頭文

いかに、わが世の、あだなるや、空(くう)なるや、うつろなるや。げに、人間のあとかたの覺束(おぼつか)なくて、數少なき。徒(いたづ)らなるは月日なり。 しかも萬人は生を惜む。いたく、性命を尊みて、これより、我より、當來より、なに物か、えまほしく、求めてやまず……噫(あゝ)、人は、當來に、豐なる賚(たまもの)を望む。 さはれ、なじかは、思はざる、當來また過去に似たらむを。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「明星 三ノ二」1902(明治35)年8月

底本

  • 上田敏全訳詩集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1962(昭和37)年12月16日