ぶんしょうのおんりつ |
文章の音律 |
冒頭文
近來の小説の文章は、餘程蕪雜になつたやうに考へられる、思想が大切であるのは言ふまでも無いが、粗笨な文章では思想が何んなに立派でも、讀者に通じはしまい、感じはしまいと思ふ。就中近頃の小説の文章に、音律といふことが忽(ゆるがせ)にされて居る、何うして忽(ゆるが)せ處ではない、頭から文章の音律などは注意もしてゐないやうに思ふ。予が文章の音律と云ふのは、何も五七調とか七語調とか、馬琴流の文章や淨瑠璃の文章
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「明治評論 第十二巻第五号」明治評論社、1909(明治42)年5月1日
底本
- 鏡花全集 卷二十八
- 岩波書店
- 1942(昭和17)年11月30日