みやざわけんじのし |
宮沢賢治の詩 |
冒頭文
彼は幸福に書き付けました、とにかく印象の生滅するまゝに自分の命が経験したことのその何の部分をだつてこぼしてはならないとばかり。それには概念を出来るだけ遠ざけて、なるべく生の印象、新鮮な現識を、それが頭に浮ぶまゝを、——つまり書いてゐる時その時の命の流れをも、むげに退けてはならないのでした。 彼は想起される印象を、刻々新しい概念に、翻訳しつつあつたのです。彼にとつて印象といふものは、或ひは
文字遣い
新字旧仮名
初出
「レツェンゾ」1935(昭和10)年6月号
底本
- 新編中原中也全集 第四巻 評論・小説
- 角川書店
- 2003(平成15)年11月25日