にほんばしふきん
日本橋附近

冒頭文

一 日本橋附近は変ってしまったものだ。もはやあのあたりには昔のさまは見出せない。江戸時代はおろか明治時代の面影をもそこにはっきりと思い浮べることは困難だ。 あのさびた掘割の水にももはやあの並蔵の白さはうつらなかった。あれがあるために、あのきたない水も詩になったり絵になったりしたのに……。それでも去年の暮だったか、あの橋の上を歩いていると、かしましく電車や自動車の通っているのを余

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京日日新聞」1927(昭和2)年4月19日〜5月5日

底本

  • 大東京繁昌記
  • 毎日新聞社
  • 1999(平成11)年5月15日