もきちのいちめん
茂吉の一面

冒頭文

私は、これまで斎藤茂吉についてはいろいろ余り書きすぎたので、今、いくら鈍(どん)な頭(あたま)をひねっても、どうしても書く事が浮かんでこない。 さて、私の手もとに、『斎藤茂吉全集』の書簡篇に自分の持っている茂吉の手紙と葉書を提出してから後(のち)に図(はか)らず或る本にはさんであったのを見つけた、二通の茂吉の葉書がある。その一通は、スタムプによると、昭和十一年の一月三十一日(午後零時——

文字遣い

新字新仮名

初出

「図書」岩波書店、1957(昭和32)年11月

底本

  • エッセイの贈りもの 1
  • 岩波書店
  • 1999(平成11)年3月5日