いぬとふえ
犬と笛

冒頭文

いく子さんに献ず        一 昔、大和(やまと)の国葛城山(かつらぎやま)の麓に、髪長彦(かみながひこ)という若い木樵(きこり)が住んでいました。これは顔かたちが女のようにやさしくって、その上(うえ)髪までも女のように長かったものですから、こういう名前をつけられていたのです。 髪長彦(かみながひこ)は、大そう笛(ふえ)が上手でしたから、山へ木を伐(き)りに行く時でも、仕事の

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤い鳥」1919(大正8)年1、2月

底本

  • 芥川龍之介全集2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年10月28日