けんのよんくんし 04 たかはしでいしゅう |
剣の四君子 04 高橋泥舟 |
冒頭文
一 熟(う)れた柿(かき)が落ちている。何のことから始まったのか、柿の木の下で、兄弟は取っ組み合っていた。 小さい謙(けん)三郎は、手もなく、兄の紀(き)一郎に投げつけられて、強(したた)かに背を大地へ打ちつけた。 「よくも投げたな」 恥辱だと思うのだ。武士の子だ。転(まろ)びながらも歯軋(はぎし)りして、兄の足へしがみつく。 「まだ懲(こ)りぬか」 紀
文字遣い
新字新仮名
初出
「講談倶楽部 二月号」大日本雄弁会講談社、1940(昭和15)年2月
底本
- 剣の四君子・日本名婦伝
- 吉川英治文庫、講談社
- 1977(昭和52)年4月1日