ぎりしゃじゅうじ |
希臘十字 |
冒頭文
Kalokagathia 「——宇宙は、単にタアオラの殻にすぎない」(ゴオガン) 一と夜。あらしの怒号が落ちてきた。 この湖中に、一隻の汽船が沈められた。 朝。わたしは見た。マストだけが湖面に二つの手をさしあげてゐる。それは、わたしの双の手に肖て、空(あだ)な足掻きを仕つくして、倦い厳粛のしづもりに返つたといつたありさま。 けふも湖のほとりにあつて、追はれるもののごと
文字遣い
新字旧仮名
初出
「希臘十字」椎の木社、1933(昭和8)年8月
底本
- 高祖保詩集
- 現代詩文庫、思潮社
- 1988(昭和63)年12月20日