えっちゅうつるぎだけ |
越中劒岳 |
冒頭文
日本アルプスの大立物の中で、最後に登られてしかも今でも最も人気を集めている山は、恐らく立山連峰の劒岳であろう。この山は古来登山者絶無と称せられ、望見した姿も断崖と絶壁とで成り立った岩の山であって、近く別山(べっさん)の頂上あたりから眺めても何処をどう登ったものか見当のつけようがない。それ所(どころ)か眤(じっ)と見ている中(うち)に大抵の人は恐ろしくなって、始めの勢(いきおい)は何処へやら、あれを
文字遣い
新字新仮名
初出
「武侠世界」1922(大正11)年7月
底本
- 山の憶い出 下
- 平凡社ライブラリー、平凡社
- 1999(平成11)年7月15日