去年の大晦日である。 ——あなたも、いよ〳〵、来年は還暦ですね。 と、ある人にいはれた。 ——さうですね。 と、ぼくは、それに対して、人ごとのやうにこたへた。 ——だつて、さうなんでせう?……六十一におなりになるんでせう、来年?…… と、相手は、あきらかに、そのこたへに満足しなかつた。 ——数へ年ならね…… ぼくのこた