いっせきわ |
一夕話 |
冒頭文
「何しろこの頃(ごろ)は油断がならない。和田(わだ)さえ芸者を知っているんだから。」 藤井(ふじい)と云う弁護士は、老酒(ラオチュ)の盃(さかずき)を干(ほ)してから、大仰(おおぎょう)に一同の顔を見まわした。円卓(テエブル)のまわりを囲んでいるのは同じ学校の寄宿舎にいた、我々六人の中年者(ちゅうねんもの)である。場所は日比谷(ひびや)の陶陶亭(とうとうてい)の二階、時は六月のある雨の夜、—
文字遣い
新字新仮名
初出
「サンデー毎日」1922(大正11)年7月
底本
- 芥川龍之介全集5
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1987(昭和62)年2月24日