わたしのおいたち |
私の生ひ立ち |
冒頭文
私の生ひ立ち 一 学校へ行く私が、黒繻子(くろじゆす)の襟(えり)の懸つた、茶色地に白の筋違(すぢか)ひ雨(あめ)と紅(べに)の蔦の模様のある絹縮(きぬちゞみ)の袢纏(はんてん)を着初めましたのは、八歳(やつつ)位のことのやうに思つて居ます。私はどんなにこの袢纏が嫌ひでしたらう。芝居で与一平(よいちべい)などと云ふお爺(ぢい)さん役の着て居ますあの茶色と一所(いつしよ)の茶なんですものね。そ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「新少女」1915(大正4)年4月~12月
底本
- 私の生ひ立ち
- 刊行社
- 1985(昭和60)年5月10日