くりやまだいぜん
栗山大膳

冒頭文

寛永九年六月十五日に、筑前國(ちくぜんのくに)福岡の城主黒田右衞門佐忠之(うゑもんのすけたゞゆき)の出した見廻役が、博多(はかた)辻(つじ)の堂(だう)町で怪しい風體の男を捕へた。それを取り調べると、豐後國(ぶんごのくに)日田にゐる徳川家の目附役竹中采女正(うねめのしやう)に宛(あ)てた、栗山大膳利章(くりやまだいぜんとしあき)の封書を懷中してゐた。城内でそれを開いて見れば、忠之が叛逆(はんぎやく

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「太陽」1914(大正3)年9月

底本

  • 森鴎外全集第4巻
  • 筑摩書房
  • 1959(昭和34)年5月30日