きかいなさいかい
奇怪な再会

冒頭文

一 お蓮(れん)が本所(ほんじょ)の横網(よこあみ)に囲われたのは、明治二十八年の初冬(はつふゆ)だった。 妾宅は御蔵橋(おくらばし)の川に臨んだ、極(ご)く手狭な平家(ひらや)だった。ただ庭先から川向うを見ると、今は両国停車場(りょうごくていしゃじょう)になっている御竹倉(おたけぐら)一帯の藪(やぶ)や林が、時雨勝(しぐれがち)な空を遮っていたから、比較的町中(まちなか)らしくな

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪毎日新聞夕刊」1921(大正10)年1、2月

底本

  • 芥川龍之介全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年1月27日