こうじん
行人

冒頭文

友達        一 梅田(うめだ)の停車場(ステーション)を下(お)りるや否(いな)や自分は母からいいつけられた通り、すぐ俥(くるま)を雇(やと)って岡田(おかだ)の家に馳(か)けさせた。岡田は母方の遠縁に当る男であった。自分は彼がはたして母の何に当るかを知らずにただ疎(うと)い親類とばかり覚えていた。 大阪へ下りるとすぐ彼を訪(と)うたのには理由があった。自分はここへ来る一

文字遣い

新字新仮名

初出

「朝日新聞」1912(大正元)年12月~1913(大正2)年11月

底本

  • 夏目漱石全集7
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1988(昭和63)年4月26日