かなしめるこころ |
悲しめる心 |
冒頭文
我が妹の 亡き御霊の 御前に 只一人の妹に先立たれた姉の心はその両親にも勝るほど悲しいものである。 手を引いてやるものもない路を幼い身ではてしなく長い旅路についた妹の身を思えば涙は自ずと頬を下るのである。 今私の手元に残るものとては白木の御霊代に書かれた其名と夕べ夕べに被われた夜のものと小さい着物と少しばかり——それもこわれかかった玩具(おもちゃ)ばかりである。
文字遣い
新字新仮名
初出
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
底本
- 宮本百合子全集 第二十九巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年12月25日初版