のうそん
農村

冒頭文

(一) 冬枯の恐ろしく長い東北の小村は、四国あたりの其れにくらべると幾層倍か、貧しい哀れなものだと云う事は其の気候の事を思ってもじき分る事であるが、此の二年ほど、それどころかもっと長い間うるさくつきまとうて居る不作(ふさく)と、それにともなった身を切る様な不景気が此等みじめな村々を今一層はげしい生活難に陥れた。 企業的な性質に富んで居た此家(ここ)の先代が後半世を、非常に熱心に尽し

文字遣い

新字新仮名

初出

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

底本

  • 宮本百合子全集 第二十九巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年12月25日初版