どんづまり |
どんづまり |
冒頭文
荒漠たる原野——殊に白雪におおわれて無声の呪われた様な高原に次第次第に迫って来る夜はまことに恐ろしいほど厳然とした態度をもって居る。 灰色と白色との合するところに細く立木が並んで居るほか植物は影さえもなく町に通わなければ「生」を保って行かれない弱い力の人間どもがふみつけた道が世の中を思わせる様に曲りくねり細く太くずーっと見通せるもより遠くまでつづいて居る。 やせがまんをしながら
文字遣い
新字新仮名
初出
「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日
底本
- 宮本百合子全集 第二十九巻
- 新日本出版社
- 1981(昭和56)年12月25日初版