あきげ
秋毛

冒頭文

病(や)みあがりの髪(かみ)は妙にねばりが強くなって、何(なん)ぞと云ってはすぐこんぐらかる。 昨日、気分が悪くてとかさなかったので今日は泣く様な思いをする。 櫛(くし)の歯(は)が引っかかる処を少し力(ちから)を入れて引くとゾロゾロゾロゾロと細い髪(かみ)が抜けて来る。 三度目位までは櫛一杯に抜毛がついて来る。 袖屏風の陰で抜毛のついた櫛を握ってヨロヨロと

文字遣い

新字新仮名

初出

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

底本

  • 宮本百合子全集 第二十九巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年12月25日初版