とおりあめ
通り雨

冒頭文

私の部屋の前にかなり質(たち)の好(い)い紅葉が一本ある。 気がつかないで居て今日見るとめっきり色附(いろづ)いて、品の好い褪紅色になって槇の隣りにとびぬけた美くしさで輝いて居る。 今畳屋が入って居るので家中、何となし新らしい畳特有の香りで一杯になって居る。 今日は子供部屋の畳を取りかえると云って中庭中に、台を持ち出してひどい風に吹かれながら縫いなおしの表(おもて)を

文字遣い

新字新仮名

初出

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

底本

  • 宮本百合子全集 第二十九巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年12月25日初版