こどくじごく
孤独地獄

冒頭文

この話を自分は母から聞いた。母はそれを自分の大叔父から聞いたと云つてゐる。話の真偽は知らない。唯大叔父自身の性行から推して、かう云ふ事も随分ありさうだと思ふだけである。 大叔父は所謂(いはゆる)大通(だいつう)の一人で、幕末の芸人や文人の間に知己の数が多かつた。河竹黙阿弥(かはたけもくあみ)、柳下亭種員(りうかていたねかず)、善哉庵永機(ぜんざいあんえいき)、同冬映(とうえい)、九代目(

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新思潮」1916(大正5)年4月

底本

  • 現代日本文学大系 43 芥川龍之介集
  • 筑摩書房
  • 1968(昭和43)年8月25日