こくいせいぼ
黒衣聖母

冒頭文

——この涙の谷に呻(うめ)き泣きて、御身(おんみ)に願いをかけ奉る。……御身の憐みの御眼(おんめ)をわれらに廻(めぐ)らせ給え。……深く御柔軟(ごじゅうなん)、深く御哀憐、すぐれて甘(うまし)くまします「びるぜん、さんたまりや」様—— ——和訳「けれんど」—— 「どうです、これは。」 田代(たしろ)君はこう云いながら、一体の麻利耶観音(マリヤかんのん)を卓子(テーブル)の上へ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文章倶楽部」1920(大正9)年5月

底本

  • 芥川龍之介全集3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年12月1日