ふたりこまち |
二人小町 |
冒頭文
一 小野(おの)の小町(こまち)、几帳(きちょう)の陰に草紙(そうし)を読んでいる。そこへ突然黄泉(よみ)の使(つかい)が現れる。黄泉の使は色の黒い若者。しかも耳は兎(うさぎ)の耳である。 小町 (驚きながら)誰です、あなたは? 使 黄泉の使です。 小町 黄泉の使! ではもうわたしは死ぬのですか? もうこの世にはいられないのですか? まあ、少し待って下さい。わたしはまだ二十一です。
文字遣い
新字新仮名
初出
「サンデー毎日」1923(大正12)年3月
底本
- 芥川龍之介全集5
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1987(昭和62)年2月24日